株式会社富士屋呉服店のアスタ染め

　着物の染付けに巨大なビル群。映画「マトリックス」を連想させるクールでサイバーなムードがたっぷりだ。

　創業105年を迎える冨士屋呉服店は、老舗中の老舗でありながら気軽に立ち寄れる雰囲気を醸し出し、こだわりのある品々を提供し続けている。その中でも真打と呼べるのがこの「アスタ染め」である。

　「アスタ」とは新長田駅南再開発エリア20.1haの愛称である。このエリアの俯瞰図からアイデアを思いつき、震災10年区切りの作品として制作した。　題材が須磨、明石海峡をのぞむビル群であり、重厚な中にも洒落気を持たせ、夏素材なのに袷（あわせ）を用いるなど遊び心たっぷりだ。

　今後は「都市画や建築のみならず、壮大な景観も作品の対象にしていきたい」と意気込む、伝統と革新が共存した21世紀の呉服店だ。

三ツ星ベルト株式会社の広告塔

　「人を想い、地球を想う」。三ツ星ベルトは様々な社会貢献事業を展開してきた。

　1919年長田区真野地区で創業し、伝動・搬送ベルトや合成樹脂素材、自動車内外装部品、防水・遮水材等、世界中で躍進してきた。地域貢献事業を積極的に展開することで全国的に知れ渡り、全国のまちづくりのモデルとなった「真野地区まちづくり推進会」に企業として人材を派遣してきた。

　1959年に創業40周年記念として広告塔を建設。誰もが必ず一度は目にしたことがあるはず。半世紀近く長田を見守り続けてきたシンボルである。ＪＲ、阪神高速、さらに神戸港沖や須磨沖からも望まれ、多くの市民から親しまれてきた。

　阪神・淡路大震災直後、長田を目指すボランティアの目印になり、壊滅的な被害を被りながらも倒れることなくそびえ立っていたその姿は、住民の励みにもなった。また工場周辺は大火に包まれたが社員が一丸となって地域住民とともに消火活動に従事し、延焼をくい止めた。

　更なる地域密着を目指し、2000年には本社を創業の地・真野へ再移転。地域とのふれあいイベントや合同防災訓練などが以前にもまして活発だ。

　今までも、これからもいつまでもずっと長田を見守り続ける広告塔は、長田の、神戸のシンボルだ。