新長田突撃レポート 気になるスポットに突撃取材を敢行!
Vol.06 - アップルの謎を解く!!
バリッバリの長田っ子なら、お好み焼き屋で一度は飲んだことあるはずのドリンク。言わずともピンときますね。透明のピュアな瓶に、形容しがたい独特の黄色さ(例えられないこともないですが、やめておきます)、そして甘さ。もうお分かりですね、ビールではなく、「アップル」です。パソコンではありません。
いったいどこで製造されているのか、なぜ長田でしか見かけないのか、長田っ子の頭を悩ませ続ける様々な謎を解明すべく、神戸商工会議所創立130周年記念事業(スゴイですね)『長田ウォーク下町レトロ探訪編』に参加しました。兵庫、長田で大活躍の「下町レトロに首っ丈の会」様がツアーコンダクターとして参加者50人を引率。地下鉄海岸線苅藻駅を出発し、路地裏の洗濯物をかい潜りながら、あまりにも下町感を醸し出しすぎている迷宮のような真野地区を探索。東京タワー、神戸ポートタワーと並ぶ日本3大タワーの一つ、三ツ星ベルト様の巨大広告タワーがひと際異彩を放つ。余談ですが、筆者の朝に欠かせない「みやこ納豆」様の本社(?)の前を横切ったときは、思わず涙腺がユルくなりました。下町のシュールさにクラクラしていると、アップルの聖地「三ツ星鉱泉所」様に到着。様々なメーカー名が入ったケースが山積されている。創業60年以上を誇り、銭湯やお好み焼き屋で長田のガキ、じゃなかったお子様たちの喉を潤してきた。工場内に歴史がひしひしと感じられる。休業日にも関わらず工場見学を受け入れて下さった社長様御自らご説明をいただく。
現在ラムネ、ソーダ、アップルを主に製造。鉱泉所は神戸では2軒、大阪でも1軒しかないそうだ。三ツ星ベルトとは、ロゴも社名も思いっきり類似しているけど、全然関係がないそう。たまたまご近所で名字が一緒という感覚でしょうか。すっかりプラスチックが主流のラムネだが、昔懐かしい瓶入りは「プラスチックの匂いが夏場はついてしまい、やはり瓶入りがおいしい」(社長談)というこだわりぶり。瓶はもう国内では製造されておらず、輸入価格も高騰しており、ものすごく貴重品だ。
ラムネができるところを初めて見た。実際に機械を動かし、炭酸と水を入れてシロップを注ぐ。ここまではご想像のとおり。ラムネ最大の謎、それはど〜やってビー玉を封じ込めるのか。その瞬間を観ることができた。一度ラムネの瓶をひっくりかえし、炭酸の圧力で一気にビー玉を押し込むのだ。一瞬の刹那的な展開に目がついていかない。マリックもセロもゼンジー北京もマギー司郎も顔負けの科学的魔術である。
アップルは年間6万本近くも製造されており、長田はもちろん明石や加古川にも進出している。しかし、アップルが似合うシチュエーションは銭湯にお好み焼き。長田はこの2大下町テイストが濃厚なので、必然的にアップルに触れ合う機会が多かったのだろう。‘コドモのチューハイ’といったオモムキか。オトナはもちろんビールにチューハイだが、昼下がりのお好み焼き屋でアップルをやっつけると、童心に戻ることができる。
そして、アップル最大の謎といえば、その名称だ。まったくリンゴの味がせず、りんごジュースの色でもない。別の意味があるのだろうか。その答えを社長にお伺いした。「もともとは‘みかん水’と呼ばれていたが、呼びにくいので‘アップル’になった」。この驚愕の真実。なぜ「オレンジ」でなく「アップル」なのか。かといって、みかんの味もしないような気がするが・・・。リンゴの香料をたっぷり使っているのだそうだ。ますます謎が深まった気もするが、世界に通用する大らかさが魅力たっぷりである。
さっそく冷えたアップルを試飲した。瓶にラベルが貼られていないため、王冠に細かく成分表示などが書かれている。保存料、甘味料、砂糖、酸味料、香料と並び、「黄色4号」という成分が表記されており、実に強そうである。商品名は書かれておらず、ただ「清涼飲料水」という潔さ。そして、王冠中央に「無果汁」と断トツに大きく表記されている。昨今、あまりにも過敏に反応する食品表示問題や健康ブームを一刀両断するこの頼もしさ、ぶっちぎりである。
呑み終えて気づいたのだが、何やら英語の表記の凹凸が瓶に浮かび上がっている。よく見ると「National Drinks」と読める。直訳すると「国民の(日本の)飲み物」。長田の飲み物とばかり思い込んでいたボンクラ頭に、稲妻がハシリました。