お好み焼き放浪記 Nagata Okonomi-yaki Wanderer's

第二回 「水原」のネギすじ焼

水原

水原の外観今回の放浪記は、三宮飲み屋街のおネエさん方にも根強い人気の「お好み焼 水原」。定員は7人らしいが、横幅たっぷりのオトコ(筆者のような)だと4人でキュウキュウの店内は、当然いつも満員。タンク筋(五位池線)に面した純下町風店構えの前には、たまにちょっぴりイカつい高級車も止まるアンバランスさが実にシュール。

正統派メニューが軒を連ねるが、オススメは「ネギすじ焼」。生地を薄く引き、キャベツを入れずにネギをたっぷり散らして焼いていく薄焼きの長田焼。出来上がりには市販で買えないどろソース。ソースを刷毛でスムーズに伸ばせない粘り腰を見せる。この激辛がたまらなく、舌をアヂアヂ、汗をダラダラかきながらビールを流し込む。この「ネギすじ焼」を2枚頼み、重ねて一気にコテを進めるツワモノのご婦人も見られる。

トロトロの黄身がまぶしい「月見肉焼」「月見肉焼」もタマラナイ。最後に生卵を載せ、ひっくり返すと半熟の黄身がさっとつぶれる。コレには甘口ソースが合う。鉄板だけでなく歴史の厚さの前には、家庭では再現不可能な本格味だ。モダンを頼まぬ限り薄焼きなので、1人で2~3枚はペロリと平らげてしまう。お持ち帰りの客も多い。最近では珍しい木のフネに包んでくれるので、店内で食べるのとはまた違うオモムキを感じさせる。この懐かしさがこの上なくウレシイ。小さい頃、お土産で買ってきてもらい、包みを開けると、ソースの香ばしさとともに、木のほのかな香りがプ~ンと漂ってくる。

「アップル」(左)と「ところ天」銭湯帰りに「アップル」を片手に、ガキながらどろソースたっぷりのヤツを食べていたのを思い出す。しかしこの「アップル」。決してリンゴの味などせず、ただただ黄色いだけでいかにも体に悪そうだが、これがまた下町のお好み焼に合うのである。いったいどこで売ってるんだろうと不思議になるが、下戸の方はぜひお試しあれ。

そして、締めは「ところ天」だ。ぷりぷりのところ天に特製ポン酢、カラシを添えて一気にいただく。「オレは3秒で平らげる」と豪語したサムライを発見したが、むせて鼻からところ天が飛び出していたのでご注意を。昭和7年、屋台から始まった「水原」は、現在水原弘二さんで3代目。アノ名物おばあちゃんでさえ2代目とは笑わせる。おばあちゃんの20年前からまったく変わらない風貌、たたずまいには感動すら覚える。重要無形文化財に指定すべきだ。アサヒとキリンを揃えているビールケースは混んでいればもちろんセルフ。セルフなので取りにいこうにも通れないので、ケースの近くに座っている客は、炊飯器の横に座ってしまったため皆のご飯をよそわざる負えなくなったお母さんのごとく、他の客のビールも取ってあげる。これが下町コミュニティだ。

水原のお店情報

定員は7人(3面使用)の店内※2009年までの情報になります。現在の営業状況につきましては各店舗へお問い合わせください。

遠くは盛岡や和歌山から出張ついでに来る客や、芸能人もお忍びで訪れている通の店「水原」は、11:30~23:00まで営業、定休日は毎週火曜日、電話は611-6139です。未経験の方、ディープな下町お好み焼を堪能しましょう!