お好み焼き放浪記 Nagata Okonomi-yaki Wanderer's
第十一回 「やよい」の絶品!カレー風そばめし(仮称)
大正筋商店街の中ほどにあるアスタくにづか4番館。館内に入ると、胃袋を刺激する香ばしいソースの香りがほのかに漂う。昼どきは、お持ち帰りの商品で、エレベーターの中も独特の香りが充満する。この香り、居ても立ってもいられない。全国ネットのマスコミや雑誌にも頻繁に取り上げられる人気店「やよい」は、アスタくにづか4番館1階の西側にある。
再開発により移転してまだ3ヶ月ほど。しかし、昭和28年創業の超老舗。店は新しくとも下町の雰囲気と歴史は色濃く顕在だ。明るく清潔な店内は陽光が差し込み、ほんわか気分に包まれる。
まずは、長田独特のメニュー「油かす焼」を焼いてもらう間、これまた長田独特の「アップル」を呑む。長田のお好み焼屋以外まず見かけることのない真っ黄色の液体、体には良くない甘さだが、長田っ子にとっては郷愁たっぷりのソウルドリンクだ。
「油かす焼」が目の前に。もちろん、鉄板直接コテ喰いだ。長田焼ならではのクリスピーな薄さの生地に、たっぷりソースをかけほお張る。下あごでサクっと、上あごでモチっとした食感を楽しんでいると、間髪入れず、ホルモンの野趣溢れる濃厚な旨みがど真ん中に切り込んでくる。鉄板の上に置いていても、硬くならずにますますサクっと感が増していくのは、魔法である。家庭では絶対に再現できない味わいだ。
そして、店の代名詞ともいえる「グッドライス」。いわゆる‘そばめし。なんといっても、通常の2倍はあろうかという超ボリューム。これまた鉄板直接コテ喰いで攻める。パラパラこぼしながら食べるのも、それだけ美味しいということ。どっかの国もそうらしいが、長田ならではの上品なマナーである。すごいボリュームだが、どんどん口に、腹に飛び込んでくる。パラっとしながらも、ソースの旨みを逃さない。ぼっかけもアクセントとして効いている。2人前はあろうかという量が、あっという間に無くなった。
冷たいラムネが呑みたくなった。目の前にはアップルとラムネ。長田紳士のアナタはどうするか。モチロン、混ぜますよね。アップルサイダーが完成。炭酸のシゲキがソース味の舌を洗い流していく。口も気分もクリアになり、さらに食欲が湧いてくる。
そして、グッドライスの応用バージョンであるカレー味にも挑戦。ドライカレー風そばめしのど真ん中に、生卵をポトリと落とす。これを突き崩しながら味わうのだ。しかし、そばめしにうるさい長田紳士は、いきなりすべてをかき混ぜるべきではない。まずは周辺のスパイシーなドライカレー風を味わい、3分の1ほど味わったところで、生卵を突き崩し、マイルドな濃味に舌をゆだねるのだ。通常のそばめしとも違う、エキゾチックな味わい。これまたスゴイ量だが、ペロリ平らげてしまう。店内の巨大プラズマテレビで、演歌が流れている。目の前には鉄板とお好み焼、そばめし。右手にコテ、左手にアップル。店の外では犬がうたた寝。開けっ放しのドアからはそよ風。これぞ昭和、日本の正しい秋である。
店主の水野さんは2代目。看板名物であるグッドライスを作るのは水野さんでもタイヘンで、腱鞘炎になることもしばしばだという。では、どうして「グッドライス」という名前なの?というご質問は、直接お店でお伺い下さいね。夜の居酒屋メニュー風鉄板焼きもグッドです。
やよいのお店情報
※2009年までの情報になります。現在の営業状況につきましては各店舗へお問い合わせください。
長田区久保町6丁目(アスタくにづか4番館1階)
定休日:水曜日
営業時間 :11:30〜15:00/17:00〜21:00