お好み焼き放浪記 Nagata Okonomi-yaki Wanderer's
第三回 「ひろちゃん」のしそ焼&タコそば焼&そばめし
国道2号線をまたぐ夢の架け橋、「アスタ新長田歩道橋」を降りてスグ、ビミョーな路地がある。ソコに足を踏み入れると、ほどなく一軒の灯りに引き寄せられる。イチゲンサンではまず気づかない場所で勝負している「お好み焼ひろちゃん」を発見。路地の雰囲気と異なり、店内は大勢の客で熱気ムンムン。店主の三浦文江さんや息子さん、お客さんの楽しい掛け合いトークが全開で、長田ならではの「いかにも感」たっぷりである。女性客が多いのも特徴だ。
まずはサッパリと『しそ焼』から。長田焼にフサワシイ正統派薄焼で、具はシソの葉と豚肉。醤油で味付けされている。コテで寸断すると、しその香りがふわっと鼻腔をくすぐる。我慢できずにパクリ。思わずヒューっと口笛を吹きそうな軽快さ、爽やかさだ。醤油で味付けすることによりシソの風味を最大限引き出している。ソースではシソの香りが負けてしまうのかも知れぬ。このサッパリ味に豚肉の濃厚な旨みが、絶妙のアクセントをかましている。アツアツをぜひ試すべし。
続いてタコそば焼。タコの巨大さにビックリ。そばを攻める前にまずはタコで舌慣らし。このタコ、プリプリしてるのに絹のような柔らかさ。プツンと歯で噛み切る感触が心地よい。「旨みの詰まった柔らかい小さめのタコを、中央市場で直接仕入れている」(店主談)のでさすがの味わい。しかし「タコは真夏がオイシイのだが、冷夏のため不漁」(店主談)と切ない事情も。それでも女気?たっぷりの大サービスだ。味付けもタコの風味を活かすために薄味。好みでたっぷりソースを。
ここで目先を変えてオリジナルの「とん平焼」を。これは随所に息子さんのこだわりを感じさせる職人仕事が施されている。生地を薄〜く引き、トンテキの上にふわふわの卵が真冬の羽毛布団のようにフワリとかぶさっている。特製ソース(マヨネーズ+ケチャップ+隠し味の醤油+α)をかけていただく。トンテキが落ちちゃったのでまずコレだけ食べると、カレー味が絶妙に利いて十分な一品勝負が可能だ。なぜ生地をひいてるのかな?と思ったら「トンテキを卵でくるんでしまうと、卵のフワフワ感が半減する」からで、かぶりつくと生地のパリパリと卵、豪快なトンテキとエキセントリックなソースの絶妙なコラボレーション。あまりの旨さに写真撮影を忘れてしまいました。
シメは長田っ子らしくそばめしで。卵をからめているのがポイント。非常にマイルドで、一瞬チャーハンのような口当たり。色目も鮮やかでコテがもう止まらない。飽きのこない素材重視の味付けだ。
店内ではたまたま阪神戦が放映されており、カウンター鉄板のお客さんは体を180度回転させ野球を見ながらコテを進める「半円ローリングの術」を巧みに活用している。値段は非常にリーズナブルだが、ひときわ目を引くラムネ・アップル100円表示が実に力強い。
ひろちゃんのお店情報
※2009年までの情報になります。現在の営業状況につきましては各店舗へお問い合わせください。
小津安二郎監督作品(観たことないけど)に出てきそうな「ひろちゃん」は、営業時間11:30〜 23:00、定休日は日祝、電話は078−621−4282です。11月下旬に昭和筋4丁目(腕塚町4丁目)に移転し、今よりちょっぴり広くなりました。そして、明石焼が復活するというウワサ。乞うご期待!