WEB限定連載 今夜もまちづくり

第三夜
「神様が、きっと願いをかなえてくれる夜 〜けいしゅう・らんぷ〜る編〜」

酒池肉林。黄金色に輝く天の甘露が喉を過ぎる。赤味を帯びた艶めかしいところを、箸で摘む。茶褐色の池に、ドボンと放り込んでやる。ピチピチとはしゃぐ音が聞こえてくる…

両手に美女ではなく、左手に中ジョッキ、右手に極上ビーフをつまんだお箸。武蔵に負けない二刀流で炎夏を乗り切るためには、第一夜に続いて焼肉に限る。世界最高級の上質肉を、(想像よりは)かなり安く堪能できるお店といえば「けいしゅう」。鷹取駅から南東へ5分程度、酒池肉林の桃源郷に誘ってくれる。

生ビールをグビっとやった後は、ダブル横綱の土俵入り。露払いは、塩タンだ。この塩タン、生でも食べられる。半ナマじゃない、全ナマ!これぞ、牛とのそのまんまディープキス。鬼のように新鮮だからこそ許される禁断の舌ざわり。軽く片面だけあぶると、香ばしさが倍加する。すだち汁と塩加減が、濃厚さを中和させてフレンチに楽しめる。

東の横綱は、厚切り肉。これまた生でも喰える極上の分厚さ。朝青龍白鵬のごとく、両横綱が入場。東の横綱は、厚切り肉。これまた生でも喰える極上の分厚さ。レアでいただく。肉、とろける。脂の上品な甘さが口中に充満する。思わず目を瞑る。意識が火星まで飛ぶ。生で口を洗い流す。ほわぁ、というため息が出る。笑顔が止まらない。

西の横綱、薄切り肉が土俵という名の金網に乗る意識が火星から戻らないうちに、西の横綱、薄切り肉が土俵という名の金網に乗る。土俵いっぱいに広げられた薄切りを、片面だけさっと焼き、そのままクルクルと巻いて食べる。熟練のテクが必要。千切れて目も当てられない状況に陥りそうな関取衆は、店の親方や女将さんに焼いていただくべし。口いっぱいに頬張ると、意識は太陽まで飛んで行った。「口福」と書いて‘こうふく’と読む。清楚と野性が同棲した味わいに、心から身悶える。あまりのジューシーさ、脂の甘さに、ビールでは物足りない。ここは、ウィスキーのロックで渋く決める。

最後の弓取り式は、ホルモン。あっさりして、深い。歯ごたえがあるのに、柔らかい。胃の底からエナジーが湧き出てくる。

今回、長●区役所現役&OBの紳士淑女が集う秘密クラブ「長田グルメの会」に、OBでも現役でもないが、強引に紛れ込んだ。やはり役所の精鋭たち、いろんな会話も、最終的に広い意味でまちづくりに収束する。長田を愛する15名弱の、もっと活性化してほしいという願いはかなうのか。ただ、どこに願えばいいのか分からない。

そんな時、店内に、どど〜んとビッグな大政治家・田中角栄元首相の激デカ写真パネルを発見。なぜ田中角栄先生の写真なのかは、お店にいけば何となくわかります。新潟人にとっちゃあ、現人神にも等しいだろう。新潟人は写真を見て拝むだろうが、長田人にとっちゃあ、迫力満点のイカツイ親父にしか見えない。願いを叶えるどころか、一喝されそうだ。

時は折しも、七夕祭の真っ最中。天の織姫様にお願いしてみよう。夜の10時頃、急に短冊を書くことができ、しかも紙縒りで編むことができる場所があるのか。

新長田駅から北へ5分ほど、新長田の鹿鳴館こと「らんぷ〜る」の灯りありました。新長田駅から北へ5分ほど、新長田の鹿鳴館こと「らんぷ〜る」の灯りが、キラキラ星のごとく輝いている。天国の扉を開けると、カウンターの向こうに浴衣を着た織姫たちが、優雅に羽根を伸ばしていらっしゃる。極上の霜降り肉と生ビール、ウィスキーで顔も体も脂と汗でニュルニュルの彦星にとって、かなり申し訳ない状況だ。そんなインチキ彦星にも、織姫は優しく天に誘ってくれる。周りには、それぞれ個性的な彦星たちがカウンターに並び、マイク片手に地の果てまで届くような歌声を響かせる。

短冊に願いを込めて、竹笹に紙縒りでくくりつける。織姫や彦星と談笑し、琥珀のモルトをカランと鳴らす。 妖精 おネエさん 酒精 アルコール に囲まれた、夜空に輝く天上の楽園。短冊に願いを込めて、竹笹に紙縒りでくくりつける。ひと安心。

いつの間にか、談笑のつもりが爆笑になり、脳内ワープ。ふと気がつくと自宅のベッドという、竜宮城から追い出された浦島太郎状態に。どんな願いを短冊に書いたかって?それは秘密。なぜなら、記憶をなくして全く覚えていないから。

[09.07.29更新]

けいしゅう

兵庫県神戸市長田区本庄町3-6-10
電話:078-735-1129

会員制すなっく らんぷ〜る

兵庫県神戸市長田区水笠通3-5-5
電話:078-642-2111

 

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