WEB限定連載 今夜もまちづくり

第十七夜
海のシルクロード、すべての道は新長田に通ず夜 〜2.激闘篇〜

第十七夜 海のシルクロード、すべての道は新長田に通ず夜 〜2.激闘篇〜
  • 掟一:どんなに満腹かつ酔っぱらっても、1品を食し、1アルコールを摂取すべし
  • 掟二:同じ食物、同じアルコールは2度と注文すべからず
  • 掟三:駅の出口(または改札口)から5分以内にオアシス(お店)を発見すべし
  • 掟四:自動販売機、超大手チェーン、コンビニは利用すべからず
  • 掟五:予算は「‘し’ん‘な’がた」にちなんで1人7,700円以内とすべし(4,700円はご勘弁下さい)
みなと元町駅
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目を凝らして商店街の横筋を探すと、三蔵法師が「山田酒販」を発見。自販機は無視して店内に。ウィスキーを探すがポケットサイズが見当たらない。720mは豊富だが、そんなものをこの駅で呑みほしてしまうと、確実にリタイアする。ビールやチューハイ、日本酒でスィーツを味わうことは、私にはできない。

苦悩を浮かべていると、インテリアのようにたたずむサントリーオールド50mlミニチュア瓶を見つけた。果たして売り物なのか。店主ですら判別がつかず、バーコードレジにかざしてみると、231円と表示がでた。売り物だったことが判明。しかも安い。ホテルのミニバーなら確実に1000円は取られそうだ。

2分43秒かけて駅に戻り、人気のない構内で分厚くカットされたカスティラを、15年以上ぶりに味わった。ふんわりと上品な甘みに、茶色の部分が砂糖で少しだけジャリっとする。大航海時代の味がする。ウィスキーをそのままグビり。口の中がきれいサッパリ一気に引き締まる。カステラにウィスキーストレート。元町にふさわしい、オトナのスィーツ攻略法である。

ハーバーランド駅
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急いで歩き、ホームと地上のアップダウンを繰り返し、食べて呑む。ふんわりと酔いが回ってくる。酒に強くないM田沙悟浄は早くも酔って目がうつろ。黄桜のカッパのようになっている。18時34分に乗ってハーバーランドに向かうが、乗り心地が空飛ぶ金斗雲のようである。いつまでも座っていたいが、あっという間に次駅に到着してしまう。いつでも座れるということは、海岸線の魅力なのか、魔力なのか…。

ホームに降りて、地獄に垂らされた蜘蛛の糸のような長さのエスカレーターで改札口へ。地上は冷えるので、地下を回遊する。オアシス(店)は豊富だが、ガッツリ主食系の店舗ばかり。どこも美味しそうだが、まだ4駅目。デュオ神戸を抜けてメトロ神戸まで足を延ばす。焼鳥と串カツのお店が並んでいる。迷ったが、焼鳥はおそらく焼きに時間がかかる。串カツの方が速そうだ。雲のような空気アタマにしては冷静な判断を下し、串カツ専門店「串萬」へ。お通し(生キャベツ)をバリバリ齧りながら黒ビールの小瓶(400円)を頼む。本日初のホップ系アルコールが喉に気持ちいい。

『串カツ大盛合わせ』(10本入・980円)が出てきた。モチロン2度づけお断り。私はちくわとキスをいただいた。串カツ&ビールは、椎●誠氏いわく黄金の組み合わせ。思わず追加注文しそうになるが、断腸の思いで店を出た。タラタラ歩いて駅に戻ると、時間は何と4分58秒。5分を超えてしまうところだった。冷や汗をかきつつ、18時34分に乗車して5駅目の中央市場前駅へ。

中央市場前駅
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初めて下車したが、我々以外電車から誰も降りた気配がない。ホームは無人で、構内でも誰ひとり見かけない。恐る恐る地上に出た。平日の早朝は、神戸市民の台所として活気にあふれているのだろう。日曜とはいえ時間はまだ19時前だが、夜中2時を過ぎているかのような静寂の闇夜が広がる。妖怪が襲ってきそうな雰囲気だ。

少しでも灯りを見つけると、吸い寄せられる蛾のごとく寄っていくが、駐車場だったりブティックだったりと空振りが続く。ようやく辿り着いたオアシスが2つ。スナックっぽい外観のお好み焼店と、店内が想像しにくい焼肉店。どちらもヘビーだ。焼肉に心ひかれたが、厳しい予算の掟がある上に、抜け出せなくなる恐れもある。勇気を振り絞り、「花子」というお好み焼店をチョイスした。

カウンターにはずらりと並ぶ常連。鬼の酒盛りに紛れ込んだ気分だが、掘りごたつに思わず笑みが漏れる。レモンチューハイ(350円)を頼み、お通しをつまむ。軽めにしようと明石焼(10ヶ・500円)と、一品メニューが充実しているけどあえてうどん焼(500円)を注文。たっぷりどろソースをかけて食す。旨い。最初は落ち着かなかったけど、店主ご夫婦も愛想よく常連も楽しそうで、なかなか居心地良い。

和田岬駅
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5店舗まわり、かなり満足感がある。ところがまだ折り返し地点。西遊記というより、箱根駅伝の様相を呈してきた。最も過酷なハイライトとされる、5区の箱根の山登りといったところか。つなぐことのない心のタスキを握りしめながら、3分14秒かけて駅に戻った。

19時36分に乗車し、後半戦最初となる6駅目・和田岬駅へ。16時にスタートし、すでに4時間近くが経過。和田岬と言えば、三菱重工。工場で働く方々で栄え、飲食店が軒を連ねている。ところが日曜なので、見事に閉まっている。近くの笠松商店街にも寄ってみたが、開いていたのは銭湯とパチンコ店のみ。やむなく駅前に戻り、鷹取を拠点に人気拡大中の焼鳥屋姉妹店と、現在神戸で最も勢いがある海鮮居酒屋系チェーン店。どちらにするか迷ったが、生ビール290円という破壊力を誇る「市場食堂」(駅前グループ)のドアを開けた。

<次回・第十八夜「哀切編」に続く>

[10.03.23更新]

みなと元町駅 / 山田酒販

兵庫県神戸市中央区元町通3-1

ハーバーランド駅 / 串萬

兵庫県神戸市中央区中町通4 メトロこうべ内
電話:078-331-7726

中央市場前駅 / 花子

兵庫県神戸市兵庫区切戸町6-18
電話:078-681-1548

和田岬駅 /  市場食堂駅前 和田岬店

兵庫県神戸市兵庫区和田宮通4-2-3
電話:078-681-0047
ホームページ:http://www.izakayaekimae.com/contents/tenpo/wadamisaki.html

 

 

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