WEB限定連載 今夜もまちづくり
第六夜
ノスタルジーが止まらない夜 〜清本の店・シュガーダディ編〜
秘密基地。甘酸っぱいノスタルジーと郷愁、無邪気に駆け回っていた『PURE GOLD♪』な少年少女時代を思いださせる甘美な響き。家の押入れ、人目のつかないビルの一画、公園の遊具の中･･･。新長田の20世紀少年少女なら誰しも、一つや二つは自分だけの、仲間達との秘密基地を有していたはず。様々な社会誘惑に汚染されていなかった純無垢の黄金時代にタイムスリップできる秘密基地が、旧・二葉小学校と目と鼻の先にある。和食割烹「清本の店」だ。
割烹や鮮魚店で厳しい修行を積んだオーナー店長が、数年前にオープン。かなり盛況。淡路や明石の昼網直送鮮魚、定番の逸品、豊富なメニューがリーズナブルに楽しめる。カウンターもお座敷も、居心地最高のカマクラのような隠れ部屋もある。この隠れ部屋が、秘密基地を思わせる。
秘密基地に潜入し、絶品料理に舌鼓。女性に大人気の果実酒も豊富。エビス生に合う逸品が、店の格を数段上げている。ギネスが呑めるのもこの上なく嬉しい。珈琲のような褐色、唇に触れると官能的でさえあるクリーミー極めた泡立ち、鼻に抜けるホップの香り。瀬戸内海が育んだ海の恵みと、アイルランドの大地とのコラボを満喫する。
意識が朦朧となる炎天下のグラウンドで、部活に明け暮れた日々。汗の湿気がこもった、オトコ汁が臭いだつ狭い部室。ベトベトの体を寄せ合いながら、着ているものを1枚1枚脱ぐ。疲労で黙り込む私や同級生。しかし、たくましい体をさらけ出し、元気いっぱい下ネタを談笑している先輩方。感嘆と驚愕。中学・高校の1年違いは、2億年ぐらいの隔たりを感じさせる。
学生時代にお世話になった先輩とは、100歳と101歳になっても舎弟関係が変わらない存在。実は「清本の店」の花板、私が中学時代に一番お世話になった先輩である。新長田を飛び出して‘成りあがり’を目指す人が多い中、生まれ育った故郷で、夜のオトナのコミュニティサロンを運営する先輩にますます頭が上がらない。
先輩と話していると、中学時代を思いだす。子供でもオトナでもない、不安定な思春期。
店を出ると、『愛しい風♪』を体を包む。鼻息というマフラーをふかし、『共犯者♪』たちと『逃亡者♪』のように六間道を疾走。直角に曲がる急カーブに体を（酔って）傾け、『チャイナタウン♪』でなくアジアタウンの丸五市場というワインディングロードをかわし、本町筋をドリフト走行（千鳥足）する。たどり着いたのは「Sugar Daddy」。永遠のカリスマ、キング・オブ・ROCK、ボスこと矢沢永吉氏をこよなく心棒する、いわゆる矢沢バーである。
イカしたマスター、壁・トイレ一面に張り巡らされた永ちゃんポートレート。流れているのはモチロンYAZAWAライブ映像。社会という枠にはめられ、‘ちっぽけな角砂糖を運んでいるアリ♪’のような生活を送ってる割りに、メタボでムダに汗ばかりかく矛盾したオッサン（私）にとって、矢沢氏は眩しすぎる。
喉が渇いた。注文するのはモチロン『ウィスキー・コーク♪』。かなりウィスキー濃い目だ。テンションが上がり、マスターからロゴ入りタオルをお借りして『止まらない Ha〜Ha♪』。天に投げる。店内が武道館になる。
人生で1番ムンムンしていた中学時代。思春期に目覚め、『通りすがりの恋♪』に妄想をふくらまし、頭の中は常に『Anytime Woman♪』だった青春時代。あれから『千の夜を超えて♪』、いつの間にやら『バーボン人生♪』に明け暮れる日々。人生の折り返し地点が近づいてきた。しかし、還暦を迎えても『ゴールドラッシュ♪』な矢沢氏をブラウン管で拝見するにつけ、私の日和気味の心を『GET UP♪』させられる。人生もまちづくりにも、様々な困難が立ちはだかる。そんな時、『アイ・ラブ・ユー、OK♪』の一言で乗り切りたいものだ。
永ちゃんに感化され、年甲斐もなく騒いでしまった。酔いも回ってきたが、新長田の夜の『ラストシーン♪』はまだまだ先。アーケードの彼方に、『セクシー・キャット♪』が隠れているかもしれないから。
［09.09.19更新］
清本の店
兵庫県神戸市長田区二葉町8丁目1-1
電話： 078-611-6150
昼：11:30〜14:00 (火〜土）
夜：17:00〜23:00（毎日）
定休日：毎週月曜日(祝日は営業)
「清本の店」の詳しい情報はこちらから
Yazawa's Bar Sugar Daddy
兵庫県神戸市長田区二葉町2丁目7－8
