WEB限定連載 今夜もまちづくり
第二夜
「亜細亜の熱風に惑う夜 〜空・喜楽・今井やん編〜」
夕暮れ。アスファルトを焦がす灼熱の太陽が、西に沈んでいく。どこからともなく、三線（サンシン）の音色が聞こえてくる。オリオンの生ビールが運ばれてきた。ひと足早い、夏のバカンス…。
という、本州にいながらたっぷりと沖縄気分が満喫できるのは、沖縄県以外の46都道府県で（おそらく）最大の店舗面積を誇る「琉球ワールド沖縄宝島」。それがなんと、新長田にあるのだ。
国道2号線に面し、アスタプラザウエストを琉球色に染め上げている。珍しい食材、グッズは眺めるだけでも楽しいが、店内の「和琉酒菜 空」では本場の沖縄料理が、現地並みの格安で味わえる。
さっそくオリオンの生をすばやく注文。同行者とガツンとジョッキをぶつけ、喉に放り込む。お通しの島らっきょうの辛味が、暑さで火照っている脳髄をキックする。夏の夕暮れの幸せだ。
様々な珍しいメニューに目移りするが、沖縄料理だけでなく、新長田ぼっかけシリーズや、地元商店から仕入れた定番食材のツマミも豊富。オーナーのまちづくりに対する情熱が垣間見える。ウチナーチュ（沖縄人）だけでなく、ヤマトンチュ（本土の人）にとっても、毎日通っても飽きのこない工夫に芸の細かさを感じる。
私の沖縄料理ベスト1は、なんといっても「ソーミンチャンプル」。そうめんでもにゅうめんでもない、油で炒めた独特の風味。紅しょうをトッピングすると、キリッと引き締まった味になる。ちなみに、家で作るとこれほど難しい料理も珍しい。いつも失敗してしまう。お好み焼きと同じく、これはお店でいただくものだろう。
シークワサーサワーに泡盛と、沖縄ドリンクがグイグイ進む。呑みながら汁物が欲しくなり、沖縄そばを注文。ラーメンでもうどんでもなく、代替の効かない金本アニキのような存在感。これには、泡盛に唐辛子を漬け込んだ激辛調味料と、紅ショウガをぶち込んで啜るのがタフな食し方だ。そばを啜る。焼豚を齧る。汁をすする。口中が燃える。泡盛を流し込む。火を噴く。悶絶する。
沖縄を満喫すると、さらにアジアの風に吹かれたくなった。出国しよう。日本のお隣といえば、韓国。国道2号線を下り、夜の大正筋、六間道と歩を進める。六間道3丁目と4丁目の交差点を南へ下ると、「喜楽」が見える。
ボリュームたっぷりお好み焼、そば焼も大人気だが、韓国料理を鉄板でリーズナブルに堪能できる。まずは「アマダイ」を頼みたい。アマダイ？そう、あのアマダイ。刺身や煮付けでなく、ピカタ風に仕上がっている。塩加減、風味、歯ごたえ。サクッとした食感を歯で感じ取ると、間髪入れずに身の塩味、甘みが押し寄せる。そのままでも十分に頬っぺた落としだが、特製のピリ辛ダレを少しつけると、気分はチェ・ホンマンだ。
シメは、チゲ鍋である。真夏にチゲ。暑い日に、涼しいところで、熱いモノ。これはクセになる。相棒は、シソチューハイ。ママが赤紫蘇から作るオリジナルチューハイ。甘さはゼロ、風味無限大。韓国料理、濃厚ソース料理と絶妙にスゥイングする。しかし、このシソチュー、季節限定なので年中飲めるわけでもない。凡そ6月から、無くなるまでだ。私の呑む分がなくなると困るので、みなさま、他の飲み物でお茶を濁していただきたくお願い申し上げます。
長田グルメのエースと4番は、そばめし＆ぼっかけなど鉄板こなもんと、焼肉などのアジア料理。この両輪が味わえるので、新長田初心者をご案内するとき、実に重宝する。30人ぐらい入れますし。
沖縄、韓国と来た。よし、もう1軒。泡盛、シークワサーサワー、シソチューハイと焼酎通しだったので、日本のラム酒と呼ばれる黒糖焼酎でシメよう。喜楽をそのまま北上すると、丸五市場のネオンが見える。その中に、夜の丸五に舞うホタルのごとく幽玄の輝きを放つ「焼酎居酒屋 今井やん」がある。
アジアの市場づくり進める丸五。那覇の公設市場や東南アジアの市場の雰囲気を、夜は特にリアルに再現している。若干の危険な香りが、猥雑なエネルギーを放出する。黒糖焼酎をあおると、太陽の湿気を含んだ南風が心を吹き抜ける。そこに、新長田でまちづくりをそれぞれの立場で頑張る若手4人が乱入してきた。かなり酔っているヤツもいる。まちづくりは、‘冷静と情熱の間’に立って進めなければならない。情熱が先走っているヤツの頭を冷やしてやる。いいリアクションを期待してるぞ。言葉ではなく、冷たい瓶ビールを、直接頭に注いで。
［09.07.15更新］
和琉酒菜 空 新長田屋
兵庫県神戸市長田区大橋町6-1-1
アスタプラザウエスト1F
電話：078-611-2521
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鉄板焼・お好み焼き 喜楽
兵庫県神戸市長田区庄田町3-5-7
電話：078-643-5656
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焼酎居酒屋今井やん
兵庫県神戸市長田区二葉町３−１０−１０ 丸五市場内
電話：080-3860-5684
焼酎居酒屋今井やんの情報はこちら
