WEB限定連載 今夜もまちづくり

第十二夜
温泉旅情に妄想する夜 〜あぐろの湯・本家さぬきや 編〜

いい旅夢気分』。仕事やストレスで凝り固まった頭をユル〜くほぐしてくれる、テレビ大阪系の超人気番組である。ビミョーな芸能人のコラボが絶妙の秀逸なキャスティング、地方の普通列車や路線バスをガチンコで利用するチープさ。旅情気分をどこまでも煽ってくれる。激安&近場で温泉気分を堪能したく、「あぐろの湯」に向かった。

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ホームセンターアグロ内にある、銭湯の枠を大きく超えた源泉かけ流しの極上空間。平日の夕方だが、かなり満員である。まずはタワーサウナへ。冷えた体が徐々に温まり、毛穴が開きはじめると、汗と一緒に毛穴の奥の汚れも、まちづくりの様々な悩みも滝のように流れ落ちる。まず12分は我慢したい。朦朧としてきたところで、水風呂にザブン。心臓が止まりそうになるが、毛穴だけでなくいろんな穴が一気に閉まる感覚が味わえる。1分以上浸かり、冷え切ったところでまたサウナ。すぐに汗が流れてくる。10分でまた水風呂へ。サウナに戻り今度は8分と時間を短くしながら繰り返す。

屋外の露天風呂へ移動。曇りがかった月を眺めながら岩風呂で手足を伸ばす。くふぅ、と臍の奥から声が漏れる。屋外にある漢方薬草サウナへ。すごい蒸気で視界がほとんど効かないが、開いた鼻から口から毛穴から、漢方薬草の独特の蒸気が体で吸収しているのがわかる。まちづくりの知識も、頭だけでなく体全体で吸収していかねばならない。

まだまだ露天風呂はお楽しみがいっぱい。なんと一人用の壺湯がある贅沢さ。温泉旅館の部屋付き露天風呂気分だ。浸かりながらいろいろヘンな妄想を膨らませていると、露天檜風呂に設置された屋外テレビの前で長田のお坊ちゃま達が『ドラ●もん』を食い入るように見つめているのが目に入る。私も思わず見入ってしまった。大人子供10人以上が全裸で『ドラ●もん』を屋外で見ている光景は、実にシュールだ。

屋内も充実。機能豊かなバスの中で、シェイプアップバスを試す。様々な角度からジェット噴射され、気になる部分を湯圧が激しく刺激する。私は波打ち際で寝そべるセイウチのように、体の角度を変え全身に湯圧を浴びながら、正月太りで割れ目すら見えなくなったお腹回りをブルブルふるわせる。「あ」と小さな声を漏らしてしまう。

このまま風呂から上がっても、汗がとめどなく流れてしまう。毛穴を引き締めてから出るのがポイントである。水風呂にはもう十分なので、屋外のうたた寝湯で寝転がると背中だけ湯が当たる。十分に温まった後なので、寒さを感じず実に心地良い。体の前面と後面で温と冷を両方味わっていると、とろとろと眠くなる。体が溶けて、幽体離脱しそうだ。

荷物はロッカーに置いたままで、隣接する「本家さぬきや」へ。麺類を中心に激安でボリュームたっぷりのフードメニューが大充実。アルコールも豊富だ。つい単品でいろいろ注文してしまうと、普段の居酒屋呑みと変わらない。温泉旅館の部屋食っぽく、懐石っぽいものを頼んでみる。

男3人、女3人といかにも温泉旅行にふさわしい陣容で、まずは生ビールで乾杯。一気飲み。体の内側からビールが吸収されていく。私の前に『京風湯豆腐御膳(?)』が運ばれてきた。おせちのような重箱の中は、タイ刺身やカズノコ、松前漬、栗きんとん&黒豆など、正月にふさわしい華やかさ。そして、温泉旅館料理に欠かせないのが、一人鍋&固形燃料コンロ。紙で作られた鍋が実にプロっぽい。湯豆腐をアチアチしながら、冷酒をついでもらい、杯を重ねる。にぎり寿しでもう満腹だ。しかも激安。

温泉旅館の楽しみは、食前風呂と食後風呂、2回味わうことである。あぐろの湯では、もう一度お風呂に突入できるのだ。腹ごなしと酔いを醒ますべく、露天風呂へ。呑んだ後のサウナは危険。長湯せず、さっと露天風呂に浸かるのが粋である。雲間が晴れ、さっきより月が大きく見える。酔って火照った頭を、外気が冷やす。天然温泉が体を温める。頭が空っぽになり、何も考えることができない。

サッパリして「本家さぬきや」に戻る。女性陣がパフェを頬張る横で、今度はレモンチューハイだ。風呂上がりのレモンチューハイは、どこまでも爽快である。

入浴と飲食を繰り返すと、ゆるゆると眠くなる。温泉旅館ではいつの間にか部屋に布団が敷いてあり、後は寝るだけであるのだが、現実は厳しい。このまま店で眠ることができたらどれだけ幸せか。私の前で、暇を持て余し酒に溺れているプチアル中のK藤が、いつの間にか机に臥せって幸せそうに眠っている。私も酔いと眠さで朦朧としてきた。K藤の背中から、何かが出てきた。あまりの気持ちよさに、幽体離脱したのかもしれない。幽体がK藤に戻り無事目覚めた後も、眼の錯覚かもしれぬが彼が二重に見える。分身したのだろうか。お笑い芸人‘ザ・たっち’のように。

 

[10.01.19更新]

あぐろの湯

兵庫県神戸市長田区南駒栄町1-6
電話:078-691-1126
「あぐろの湯」の詳しい情報はこちらから。

本家さぬきや

兵庫県神戸市長田区南駒栄町1-6 源泉湯元あぐろの湯内
電話:078-647-3227
「本家さぬきや」の詳しい情報はこちらから。

 

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