WEB限定連載 今夜もまちづくり

第十五夜
オトコの夢が一つだけ叶う夜~TeTe・ハーロン・大黒湯 編~

TeTe
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メコン川。東南アジア各国に肥沃な恵みをもたらす大河川である。盛況だった「新長田逸品ツアー」の添乗員業務を無事に終えた帰り、私自身が旅に出たくなった。冬真っ盛りの日本を飛び出し、温暖なメコン川クルーズなど好ましいが、暇も金もなし。夜だけの疑似メコン川ナイトクルーズに繰り出した。

最初に訪れたのはミャンマー。丸五市場にある日本唯一のミャンマーカレー専門店「TeTe」に入国。ご主人がイケ面ミャンマー人である奥様の阿雲さんが切り盛り。ミャンマーカレーの恐るべき特徴。それはカレー粉を使わないこと。果たしてカレーと言えるのか。これは食べて確かめるしかない。

ミャンマービールでクルーズ客らと乾杯し、香ばしいナッツや発酵茶葉を使ったミャンマーサラダ『ラペトウッ』をつまんでいると、豚肉&じゃがいも、エビ&さつまいも、チキン&茄子という3種類のカレーが出てきた。しっかりとカレーの味がする不思議さ。具の旨みも十分に引き出されている。実にヘルシーなカレーだ。ここで、お店の逸品『豚肉の黒カレー』が登場。大蒜と生姜がバッチリ効いたパンチのある旨さ。これが絶品。やみつきになる味わいだ。どれを食べてもボリュームたっぷりで格安である。

芋焼酎をロックで頼んだ。私は、ライス抜きカレー(ルーのみ)で強い蒸留酒を呑むことを好む。これが実に相性が良い。具をつまみ、焼酎をグビリ。ルーをつまみ、焼酎をグビリ。これを繰り返す。カレーライスだと腹がいっぱいになり酒が進まないが、これならいくらでも酒が進む。スプーンでなく箸を使うと、さらに長持ちする。まあ、ご自宅で試された方が無難であるが。

ミャンマースターのカレンダーが店内で存在感を放つ。女性スターは別嬪ぞろいだが、男性スターは実に微妙である。服装、ポーズ、髪型。ある意味で実にイカしていると言える。インドと同じく、ミャンマーも太っている方がモテるそうだ。ちなみに太っている私は昔、フィリピンパブでフィリピン人アクションスターに似ているとチヤホヤされ、複雑な笑みを浮かべたことがある。

現地では青唐辛子を齧りながら酒を呑むそうだ。一度試してみたかったので、お店に1本もらって丸かじり。最初は青臭さが口に広がる。余裕と思って呑みこんだ瞬間、噴火した。マグマが舌、喉、食堂、胃を焼き尽くした。じっとできず、立ち上がり歩きまわる。息を吸うだけで熱風。しゃべろうとする自分の呼気の熱さに悶絶。辛いというより痛い。汗と涙が止まらない。過去最凶だ。ただし、二日酔いの解消方法に優れているのではないか。一気に覚醒し、発汗する。余計に具合が悪くなる可能性も大きいだろうが。

ハーロン
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続いてベトナムに入国。国道2号線沿いにある本格ベトナム料理「ハーロン」である。店員もすべてベトナム人で、ベトナムの家庭に招かれたような独特のムード。日本語はもちろん通じるが、たどたどしさが異国情緒たっぷり。完全アウェー感に、旅情気分が最高潮に達する。

ベトナムビールを呑んでいると、ベトナム風揚春巻が先陣を切る。具だくさんでパリッパリ。ベトナムっぽいタレとぴったり。これは旨いぞ。続いてフランスパンと海老の天ぷら揚げ。海老の甘味とパンの香ばしさが油で封じ込められており、これまたビールが進む。ベトナム風お好み焼きはモヤシが入っており、チヂミっぽい味わい。羽を広げた黄金色の孔雀のような形をしている。このパリパリが旨い。

ベトナムといえば、生春巻。私は今まで生よりも揚げた方を断然支持してきたのだが、考えが変わった。半端なく手間がかかっており、素材の旨みが際立っている。絶品。驚いた。ベトナム赤ワインに切り替え、シメは鶏肉のフォー。平べったい米の麺がつるつる喉を滑る。香味野菜たっぷりなのも嬉しく、鶏肉のエキスがスープに溶け込んでいる。夜だけの営業でなく、昼にこのフォーを啜りたいものだ。

疑似メコン川クルーズの終着は、大橋9丁目付近の「大黒湯」。スチームバス(サウナ)が無料という豪気さ。蒸気たっぷりのミストサウナは、ベトナムの濃密な湿度を連想させる。3方向から激しく噴射されるジェットバスは、ミャンマーのスコールのような激しさだ。名物のながれ風呂を眺めながらじっくり手足を伸ばして浸かっていると、雄大なメコン川の流れに身を任せている気分になれる。アジア色豊かなまちづくりを進める新長田。どちらかといえば東アジア寄りだが、東南アジアもいいものである。

オトコの夢。宇宙飛行士、プロ野球選手、大富豪、街の活性化などいろいろだが、銭湯の番台に座ることも夢も一つに数えられる。こちらの銭湯、実は私の元同僚K本嬢が看板娘の一人である。無理やり呼び出し、頼み込んで10秒だけ番台に座らせていただいた。嬉し恥ずかしニヤケ顔が止まらない。オトコの夢が叶った瞬間、と言いたいが、今どき脱衣場に向いた番台などあんまりない。大黒湯も脱衣場と逆向きの完全エリア外タイプだ。視界に映ったのは、TVを観ながらソファーで寛ぐ、風呂上がりの着替え終わったオジジとオババだけだった。

大黒湯
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[10.02.28更新]

カレー粉を使ってないミャンマーカレーの店
TeTe

兵庫県神戸市長田区二葉町3 丸五市場内
電話/080−5631−8129
営業時間/11:00〜14:30
店休日/毎火曜日と土曜日

ベトナム料理 ハーロン

兵庫県神戸市長田区腕塚町7丁目6-8
電話/078-643-0927
店休日/第2・4火曜日

大黒湯

兵庫県神戸市長田区若松町9-2-1
電話/078-611-1019
営業時間/15:00〜22:00
店休日/ 毎週日曜日
スチームバス(サウナ)無料

 

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